いつか見た夢






「どうした、調子でも悪いんか?」

「いや、別に」

調子が悪いんとはちゃう。
ただ、何か…

とりあえず今は校外学習中、他のことは考えんとこう…と。
思えば思うほど、他のことに頭が回る。
えぇ加減、どうにかしてほしい。


吉野といえば、桜とか、紅葉とか…
季節の風情で有名らしいけど、近場大阪に住んでるモンとしては、特別興味が沸かん。
大阪城の桜かて、大層なもんやん?

ってか…せやのに、そもそもこんな…何で冬に吉野なんか。
奈良は大阪より寒くて敵わん。



宿からしばらく坂を下ると、蔵王堂が見える。
蔵王堂ゆーたら、確か吉野で源義経と別れた静御前が、追っ手に捕まって歌を詠んだところやったハズ。
『吉野山 峰の白雪ふみわけて〜』…やったっけ?
ちょっと前に習ったばっかやったから、微妙に憶えてる程度やけども。

この蔵王堂を見るのが、オレらの目的。
吉野といえば、蔵王堂らしい。
確かに、大層なお堂やとは思うけど。


、写真撮るでー」

言うな!」

ダチが道行く人に写真を頼んでる間、オレはボーっとお堂を眺めてた。



そして、次に奴らに呼ばれた瞬間、視界が真っ暗になった。











何…何やねん……?












いつか見た、夢に似てる気がした。
一種の、デジャヴみたいな感覚。




ばー…ちゃ、ん……?

、望美ちゃんと…将臣を、譲を…』

「ばーちゃん、何や!? 最後まで言うてくれなわからんやろ!!」

いつもみたいに、勝手に消えんといてくれ!!



…いつも、みたいに?



“いつもみたいに”ってどーゆーことや?
オレ、何を憶えとるんや…?









『我の声を聞け、神子よ…』

み、こ…?

『我ら明王の力を受けし神子よ…』

どーゆー…?

『我らが汝に力を与える』

ちょい待てや、何を…っ

『その力を持って、白龍の神子を支える力となれ』

“はくりゅーのみこ”って…!?

『『そして、世界を救うのだ…!』』



ちょぉ待て言うとるやろが…!!














落下する感触が、意識を奪っていく。




気がついたそこは、なんか狭い、暗い……


















ってゆーか、ここ、ドコやねん…?