描く夢
どこかわからん…そんな中で、最初に出会えたんは望美ちゃん達やった。
これはきっと、運が良かったんやろう。
何でか閉じ込められてた賽銭箱の中には、宿舎から持ち歩いてたリュックがあって…
その中身は変わってへんやろうかと、図々しくも他の人らを待たせながら確認してみた。
…うん、大丈夫。
「くんはこっちに来る前、その服装だったの?」
望美ちゃんが、オレの格好を見て問い掛けてくる。
確かに、望美ちゃん他…将臣と譲くんの服装は、オレらの住むところではそうそう見ぃひん格好やけども。
かといって、オレらの世界の平安末期の時代に、こんな中途半端に現代的な服装があったとも思われへん。
「あぁ、せやけど……吉野に宿泊学習に来とってん。んで、気ィついたら…みたいな」
「そうなんだ?私たちは…学校の廊下を歩いてたら、だよ。ホント、びっくりしちゃった!」
「そらビックリもするわなー。…その格好は、こっち来てから?」
「うん、そうなんだけど…気がついたら服装が変わってたんだよね。いつの間に着替えたんだろーって感じ。譲くんもなんだよね?」
「はい。持ってたものがどこかに行ってしまって…どうしたらいいのかわからなくて」
「そうなんや?」
オレとは随分状況が違うらしい。
確かに…ワケわからんとこに来て、かつ持ってたモンまでどっか行ってたら、どうしていいかわからんようにもなる。
「俺は来たままの格好だったぜ?」
ずっと前を歩く、将臣が振り向いて答えた。
「え、そうなんだ?」
「あぁ、お陰で2〜3日は生き延びられたぜ」
明るく答える将臣に、望美ちゃんと譲くんは複雑そうな表情で返す。
着いて直ぐ誰かに会えたオレとは違う、多分そんな感じ。
将臣だけが2人とも雰囲気が違う…それはつまり、もっと別んトコで他の苦労をしてきたっちゅーことなんやろ。
夜は、村の人らが小さい宴とやらを開いてくれた。
村の人らの服装やら、出してくれた食事を見る限り…やっぱりここはオレらの住む時代とは違う。
それはやっぱり、どっかオレらの世界の平安時代と呼ばれた頃と似てるようでどっか違う…そんな世界。
歴史の勉強は元々好きやった。
その中でも、平安時代には多少興味があって調べてたこともある。
でも、夢に描いたその時代とは…
多少、違うらしい。